薩摩国(鹿児島県)の刀
鍛冶である波平(なみのひら)派・波平行安作の
太刀。
波平派の刀は大和国(奈良県)で生まれた“大和伝”の形式で作られている。
大和伝は直刃(直線に近い刃紋)が多く、刀の姿=作りこみも独特な姿になる。
数十代、数百年にわたって続いた波平銘で現存する最古の刀。
この刀には次のような逸話がある。
波平は稀代の名刀を作ろうとして、「決して入ってものぞいてもいけない」と妻に言いつけて
鍛冶場にこもった。しかし、ある時鎚の音が聞こえてこなくなったので妻は心配して
鍛冶場をのぞいてしまった。最後の仕上げをしているところだった波平は
集中が切れてしまい、失敗したと思った波平はその刀を裏の竹やぶに捨ててしまった。
しかし、その竹藪から何かが光っているという噂が立ち、村人が覗いたところ、その刀は茎(なかご:刀身の柄の中にある部分)が地中に埋まり、切先が直立した状態で舞い落ちた笹の葉が無数に貫かれていた。ここから、この刀は「
笹貫」と呼ばれるようになったという。
また、実際に鹿児島県の地名にも「
笹貫」と呼ばれる場所がある。