室町時代後期に栄えた刀工集団・備前長船
祐定の作刀。
長船は地名(現在の岡山県長船町)であって個人姓ではなく、
祐定もまた個人名ではないことに注意されたい。
祐定一門は名工を数多く輩出し、現存する刀も多いが、それだけに作品の質や時代も幅広いものがある。
質の良し悪しは銘で見分けるのが一般的で、「備前国住長船与三左衛門尉
祐定」のように個人銘まで丁寧に切られており、更に製造年月や持ち主の名前も切られているほど、刀自体の出来栄えも優れたものが多いとされている。
対して、ただ単に「
祐定」または「備前長船
祐定」と切られただけのものは、殆どが戦国時代の刀剣需要に応じて
大量生産された"数打ち"品であるが、刃紋や地金の美しさなどの見た目はともかく、
武器としての機能はなんら劣るところは無いと思われる。
また、個人銘が切られるようになったのは永正年間からであり、その時代のものは個人銘が無くとも優品が多いことなどから、銘はあくまで判別基準のひとつとして捉えるに止めたいところである。